• Posted 12.06.22

私達のやっている組織開発コンサルテーションは、一言で言うと「どうやって戦略をやり切る組織を創るか」という挑戦である。したがって、戦略の再構築、人事システムの変革、個人の意識・行動スキルアップなど、様々な角度からアプローチを行う。

そんな中、必ず出てくるのは「従業員のモチベーション」という当り前だが根深い問題である。
経営幹部の方には、「うちは給与や賞与を上げたので、モチベーションも上がるはずだ」とか「業績悪化に伴い賞与を減額したのだから危機感を持つはずだ」という「金銭的動機」の効果性を力説する方も多い。

 

少々前の話になるが、TEDというアメリカのプレゼンテーションイベントの中で、ニューヨーク大学教授のクレイシャーキー氏が、次のよう実験結果を紹介していた。

イスラエルの複数の保育園で、お迎えの時間を守らない父兄が多いために、「お迎えの遅刻については、10分以上遅れたら10シェケルの罰金」という規則を創り、その成果測定の実験を行った。

その結果どうなったか?
それまでは、平均一保育園あたり週に6-10人が遅刻していたのが、一気に3倍の遅刻者数に「増加」してしまったというのだ。
更に驚いたことに、12週間後に罰金制度を修了した後も、増えた遅刻者数は元に戻らなかったそうだ。
この実験の結果から、クレイシャーキー氏は次のように仮説を立てた。
「金銭的動機と内因性動機は相性が悪い。そして、一度不一致が生じると修復に時間がかかる。」

 

「戦略をやり切る組織」の大前提は、組織の内因性動機に火をつけることである。そしてそれを継続的に行おうとするには、心理学教授のハーツバーグ氏が述べた通り、仕事をすることによる自己実現の達成感や自他承認などを向上させることである。給与などの金銭的動機ももちろん大切だが、それはあくまでも一時的な衛生要因にすぎないのである。

だからこそ、我々のコンサルテーションにおいては、戦略遂行上の具体的なタスクやシステムをメンバーと一緒に考えながらも、同時に、「戦略の自分にとっての意味」や「戦略をやり切ることで自分自身は何者になりたいのか」を問い続けている。

 

その両面が一致した時に初めて戦略が社員のものになり、その瞬間こそが我々の達成感である。

 

平尾貴治