• Posted 12.11.04

ODネットワークジャパンの10月度研究会でインプロのセミナーを受けました。
「インプロ」とは、インプロビゼーション (improvisation)のことで、直訳すれば「先を見る(読む)ことをしない」、つまり即興劇や即興音楽のことを言います。
今回講師になってくれたのは、インプロの第一人者である学芸大学の演劇分野準教授の高尾隆さんです。
当日は、脚本のない短い即興劇を参加者全員でいくつか実践し、それを振返るという実習をいくつか行いました。
一見遊びのようですが(実際に楽しいのですが)、体験後にワークを振返ると、怖いほど普段の自分の仕事の進め方や、人との接し方が見えてしまいます。

 

このインプロに対して、企業・自治体・教育現場など様々な組織からの要請が、急増しているそうです。
社会環境の変化が激しくなる中、ビジネスモデルもマネジメントスタイルも、既存のやり方を続けていては対応できなくなっているのは、「頭」では、わかっています。しかし、同時に人間というのは変化を極端に嫌う生き物でもあります。
だからこそ、あらゆる組織に「変化を楽しめる文化創り」は必要になっているのかもしれません。
先日もコンサルテーションの中でこんな相談を受けました。
若手も含めた社員全員が、現在の仕事の多くについて「今のままではいけない。変えたい」と訴えたそうです。
その声を背に受けて、社長は、プロジェクトチームを社員自身に立ち上げさせ、運営させました。
ところが、プロジェクトチームの活動が進み、いざ自分の仕事に変化が及び出すと、多くの社員が、今度は変革に対する抵抗勢力となり始めてしまったということなのです。

「頭」は変革が必要としながらも、「心」「体」は拒否しています。
高尾さんと中原淳東大准教授との共著「インプロする組織」には、我々は子供の時から「学習」ではなく「教育」ばかりを体験してきたのではないか?という問題提議がありました。
「教育」と「学習」は違います。
教育とは、答えのある正しいものを、権威のある人から教えてもらうことであり、学習とは、答えがなく違和感さえあるもの自分で受け入れ、成長していくことです。
確かに我々のコンサルテーションにおいても、戦略やマネジメントという正解の無いものを実践していただくために、座学でなく、まず本人に徹底的に考えていただく姿勢でいるのですが、最近はメンバーから「先生、まず答え(やり方)を教えてください。僕ら一所懸命覚えますから」と言われることが多い気がします。
こうした変化に対してのジレンマを乗り越えるためには、前述したように、組織に「答えの無いものや変化を楽しめる文化」を定着させることが必要であり、そこを結び付けるカギがインプロにあるのかもしれません。
変化を楽しむためには、評価を手放し、将来に執着せずに、今に集中することです。
先程の本の中では、哲学者の中村雄二郎氏が、「『科学の知』が行き詰まりを見せていて、それを補完するものが『臨床の知』である」という言葉が載っていました。
いかに予定調和の安定感を脱することができるか、それが変化の時代に生きる我々のポイントなのでしょう。

 

平尾貴治