• Posted 19.12.16

今回から3回に分けて、広報コンサルタント・石川慶子氏と弊社の平尾貴治とのインタビューをお届けします。

石川氏は国内における危機管理広報の第一人者として、報道関係者からも認知されています。リスクマネジメントの専門人材を育成するNPO法人の理事も務め、芸能人から政治家、企業トップに至るまで、謝罪会見があった際は必ずテレビや全国紙などからコメントを求められます。企業不祥事が発生した直後の現場に駆け付ける機会も多く、根深い組織文化の負の側面が露わになった姿を間近で見てきました。
 今回のインタビューでは「広報と組織開発」をテーマに、広報とリスクマネジメントの専門家としての立場から、組織開発について語ってもらいました。その場に同席した当社代表取締役の平尾のコメントも掲載しています。

<石川慶子(いしかわ・けいこ)プロフィール>
広報コンサルタント/有限会社シン取締役社長。
日本リスクマネジャー&コンサルタント協会理事。
東京都生まれ。東京女子大学卒。参議院事務局勤務後、1987年より映像制作プロダクションにて、劇場映画やテレビ番組の制作に携わる。1995年から広報PR会社所属。2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。以来、企業・団体に対し、平時・緊急時の戦略的広報の立案やメディアトレーニング、メディアリレーションズ、広報人材育成等のコンサルティングサービスを提供。リスクマネジメント研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱、マイクロラーニングとして学習プログラム開発。
日本広報学会理事、公共コミュニケーション学会理事。講演活動やマスメディアでのコメント多数。

Q:石川さんは広報とリスクマネジメントの専門家として、企業不祥事の根深い問題や対応に対して数多くメディアなどにも登場されています。専門家の視点で企業の共通の課題として感じていることなどありますか。

石川氏(以下、石川):私の仕事は危機管理やメディア対応トレーニングです。何かあったときに、緊急事態発生時に説明責任を果たすための訓練で、緊急記者会見開催や公式見解書作成などの支援も含まれます。ダメージコントロールが私の得意分野ではありますが、平時からのリスクマネジメント体制構築の方がもっと重要です。
日本企業は社員がリスク情報を共有する力をつける必要があるとみています。本音で語れる関係を作ること、と言ってもいいかもしれません。そんな組織になるためには平尾さん(当社代表取締役社長)たちの組織開発の視点はなくてはならないものだと感じています。

Q:不祥事を起こす、あるいは起こし続ける企業の土壌や組織風土というのはどういうものなのですか。

石川:繰り返している企業は、事態を過小評価してしまい、深刻に受け止めていないという共通点を感じます。だからこそ表層的な対応になってしまう。
危機発生時は案外「運が悪かった」と被害者意識に陥りがちです。本来は深く反省して、どうして起きてしまったのかとよく考えて、二度と起こさないための体制づくりをしなければならない。とても道のりが長いのです。危機対応は1〜2週間の短期勝負ですが、再発防止のための施策になると、1年・2年・3年とかかるわけです。ここで組織風土を変革するプロセスを入れなければなりません。根気が必要ですから平尾さんに頼りたいですね。私は短気でお叱りモードになってしまうので、危機時の方が向いていると自覚しています。

不祥事が起こり繰り返される組織のメカニズム

石川:2000年に雪印乳業の集団食中毒事件が起きましたが、その後に食品の偽装が起きてしまいました。1回目の時、すぐ業績や株価が回復したため、本気で組織風土改革に取り組みませんでした。そして、2年後に偽装問題が起きた時には、1カ月で倒産してしまいました。その後、雪印乳業再建には3年かかりました。当時の広報担当者から3年目と10年目に合計3回お話を聞きましたが、組織風土を変えるためには「風化させないこと」と戒めて体制構築をしたと、その長く苦しい道のりについてかたってくださいました。不祥事と組織風土の関係は密接だと思います。
リスクマネジメントを勉強し始めた時に、問題を深堀していくと究極的には二つだよと言われたことがあります。「コミュニケーションの問題」と「ルールの問題」だと。そんな時に、平尾さんからODネットワークジャパンの1回目の会合に誘われ、平尾さんからも人間の感情や集団心理の話を聞きました。私は、昔から心理学に興味があって、強いインパクトを受けました。
組織の中で自分の内面に溜め込んでいるものが多いと、不正の温床になってしまいます。自分の内面を出し合える関係を組織につくることによって、結果としてリスクが軽減されるという考え方に共感しました。
リスクの洗い出しという意味で、感情も含めて思っていることを共有することはプロセスとして大事です。それができない環境が会社の中にあるから、みんな溜め込んで溜め込んで、それがマグマのようにある日、ボーンと噴出しちゃうんじゃないかなと思いました。

平尾:今のお話で、不祥事の1回目は簡単にクリアできてしまうと、またもう1回起こすという話だったではないですか。実はさらに根深いのは、1回目までの間、ずっと表れなかったという一種の「成功体験」があったことだとみています。これで大丈夫という意識の枠組みがリスクを生み出すんです。
以前、石川さんにお会いした時に、私たち組織開発コンサルタントは、腹のなかに溜め込んでいる本音を表に出すことを大切にしているとお話しました。それは、ただ自己開示して仲良くなろう、裏がないようにしようということではありません。それ以上に互いの見方、主観の違いをどのくらい表に出せるかです。そうしないと、いくらルールを作り上げても健全な組織にならないと考えるからです。

Q:確かにコミュニケーションのレベルを見極めることは重要です。石川さんが専門とする広報では、コミュニケーションの文化をどうつくられているんですか。

石川:広報では、外向けの情報発信に目がいってしまいがちです。そこでとどまるのではなく、(コミュニケーションには)社内における情報発信、あるいはトップが行う企業風土を変えていく、文化をつくっていく側面もあります。そういう意味では広報に携わる人もリスクマネジメントに携わる人も、組織開発をもっと勉強するべきだと思います。
広報学会でも、社内広報のあり方の発表はあるのですが、組織開発の視点での発表はあまりないですね。学会における広報の人たちの意識も、外向けのマーケティング的なことだけではなくて企業風土を変革していく、つくっていくというところにもっと焦点を当てていかなければいけない。
一方で企業の社内コミュニケーションというと、一般的にトップのメッセージを伝えることなどには一生懸命です。ネガティブな情報も含めて流通させる意識まで持っている会社は少ないです。

平尾:それは組織自体がネガティブなものを共有しようというスタンスにならなければ、広報もそうならないでしょうね。

⇒第2回「 組織の中のフィードバックシステムの重要性」に続く