コンサルタントブログ

Withコロナにおける組織開発とドラッカー(3/3)

2020.08.07ブログ / 広報誌

平尾 貴治

※Withコロナにおける組織開発とドラッカー(2/3)より続く

ドラッカーの学びとシー・シー・アイの組織開発が目指すところ

平尾 先般、シー・シー・アイの考える組織開発の事例を話していたら、ある方から「整体師みたいなことをやっているのですね」と言われました。
確かに整体師は身体のずれをまず診ます。組織を見るときも同じなのです。
ドラッカーは部分の因果よりも、全体からありのままに見ていたといわれています。組織を全体からありのままに見るのは、シー・シー・アイでも大事にしていることです。
一人ずつヒアリングしていくと、数字についての発言は同じでも、感覚とか主観、感情の部分で微妙なずれを感じることがあります。ずれを感じたら、誰が正しいとか間違っているなどの評価は一切せずに、「こんなずれがあります」と率直に伝えるのがスタートです。

井坂 ドラッカーも言っていたことですが、コンサルタントは医師の診断に近いことをしているのですね。
処方や治療の前に、診断が誤ったり雑だったりしたら、かえって患者の健康を脅かすことにさえなりかねません。
しばらく前にお亡くなりになった精神分析家の河合隼雄先生が作家の村上春樹さんとの対談で語っていたことを思い出しました。河合先生も、始めは患者の話を聞くというからスタートするというのですね。なるべく口を挟まず、しゃべらせるという。
ドラッカーも、コンサルタントとしては、耳を傾けることに重きを置いています。語る内容は、すべて長期的な視点にもとづいた助言であり、強引な変化を迫ったりするようなトリッキーな要素は一切含まれていない。
組織開発も同じではないかという気がするんですね。
何しろ相手は生き物なのですから、それぞれのふさわしい時間というものがある。生命はいろんなものがつながっていますから、あるところに強烈に作用を及ぼすと、思わぬところに副作用があるかもしれません。

平尾 でも、即効性のある魔法の杖が欲しいという企業も多いですよね。
私たちは「内部者で納得できる戦略」を決めてもらうサポートをしています。にもかかわらず、「誰かが戦略を決めて僕らに提供してくれる」という期待と戦わなければいけないこともあります。

井坂 つくづく思うのですが、人は葛藤の中でしか成長の機会を手にできないのではないでしょうか。
答えはどこかの誰かがもっているという想定自体が学びの回路を閉ざしてしまう可能性がある。そうだとしたら、答えをあげるという人が現れたら簡単にコントロールされてしまうでしょう。

平尾 反射的な思考を脱して、ようやく本当に考えるチャンスをもらっているのだという考えは、大事かもしれないですね。
今日は深い話をありがとうございました。

<井坂康志(いさかやすし)氏プロフィール>
1972年埼玉県生まれ。現在、ものつくり大学特別客員教授、ドラッカー学会理事、編集者、メディア・プロデューサー。早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。著書に、『P・F・ドラッカー-マネジメント思想の源流と展望』(文眞堂、経営学史学会奨励賞受賞)、『ドラッカー入門 新版』(ダイヤモンド社、上田惇生氏と共著)等。

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