• Posted 13.06.25

先日、あるクライアント様(中小企業の製造業)にお伺いしたところ、工場の敷地内に見慣れない大きなトラックが並んでいました。
「何の工事ですか」と伺うと「井戸を作ったんですよ」とのお答え。
この時代に井戸?といぶかる自分に、その社長がこんなお話しをしてくれました。

 

「3.11の震災の時に我社は何も出来なかったんだよ。マニュアルや連絡網も不完全だし、食糧備蓄も無く、緊急時指揮命令も弱かったしね。
幸い誰もけが人はでなかったが、自分の会社があのような状態だったことが心底情けなかった。
そこで、建物は全て耐震構造に改築し、緊急時ルールも作り、食糧備蓄も完璧に行ったんです。
しかし、もし何日も従業員が帰宅できないようになった時に、実は、一番困るのはトイレの問題だと気づいてね。
色々調べたところ災害対応井戸という方法があることがわかり、専門家に頼み、敷地を数十メートル掘り井戸を作ったんだ。
これを最終的には工場付近の住民の方にも告知するんだ。
うちは敷地があるからいざとなったら付近の住民の方も収容する必要があるからね。」

 

最後に「2年もたってようやくここに行き着いたのは全く恥ずかしい話だけどね。」と頭をかいていらっしゃいましたが、私は逆に大きなインパクトを受けました。
何故なら、その社長は東日本大震災のあと2年にわたり、忙しい事業の傍らで、忘れずに震災対応の反省をして、着実に手を打ち続けていたということです。
多くの方が、震災の直後は様々に考えをめぐらし、法人であればBCPの策定に一所懸命でした。
ところが、いつのまにか恐ろしい記憶は風化し、緊急時対応の話は優先順位を下がり続けているようにも見えます。
被災地の何も変わらぬ現実はテレビを見ればわかっても、私も含めて、震災はどこか遠くの話になりつつあります。
そんなことに改めて気づかされた社長との会話でした。

 

弊社でも、8月に他社との合同で緊急時対応マネジメントをテーマにした公開セミナーを実施いたします。
「今更」ではなく「今だからこそ」じっくりと考えてみませんか?

 

平尾貴治