編集の時代

11月1日(木)のカンブリア宮殿を見て

築40年の木造長屋が大人気住宅に! “家賃を倍”にする不動産再生集団!

ブルースタジオと言う会社が紹介されていた。

新築のマンションの20%が空き室になっているなか、築40年のボロボロの長屋をリノベーションして新築のマンションに匹敵又は超える家賃で再生させる。しかもその長屋で新しいコミュニティを創り上げていく。ReformもRenovationもどちらも「Re」がつく。しかしReformは箱を変えること。しかしRenovationは生活のInnovationする事だ。

そして最後に村上龍さんのコメントがいつになく長かった。

それをご紹介すると、大規模な「再開発」が報じられ完成した複合施設が紹介されるたびに、私は違和感を持った。

スクラップ&ビルドはもう時代遅れだと感じたのだが、ブルースタジオのお二人と話していて理由がはっきりした。

わたしたちはいまだに、あらゆるものが不足していた時代の呪縛から解放されていない。

ブルースタジオの、「住宅の編集」という考え方は新鮮だった。あらゆるものが足りないのではなく、あふれているのだ。

すでにある資源をどう組み合わせ、どう活用するのか。

「編集」という発想は、住宅・建築だけでなく、経済・社会・文化など、あらゆる領域に、有効であると思う。

編集の時代 村上龍

新規事業開発が大きくテーマになっている今、示唆に富んだ事例だった。

 

大島 岳

トップのBeing

先日、社内のミーティングで、「戦略をやり切る」組織を作る上で何が一番重要なのかという話が話題になった。何よりトップのコミットメントが重要なことは言うまでもない。しかし他にもいくつかの重要点が上がった。そのなかで印象に残った部分を紹介したいと思う。

 

・戦略を実行する上で、上は何が必要か下に要求しているか。

スタッフから最近の体験として、戦略があっても、それを実行していく上で幹部や社員に対して明確に「要求」していることが、伝わっていない事が実に多いという問題提起があった。本質を変えるために何を主語として、何を具体的に変えなくてはいけないか伝わっていないのだ。

どうしてそんな状況になるのか、自分の中で反芻してみた。自分が上の立場として伝わっていない状況を想像すると、ビジョンを伝えたので、伝わったつもりになっている事がまずは思いついた。そこで思わず聴いてしまった。「俺ってみんなに要求しているかな?」

その事例を出したスタッフから「要求してますよ!!」と半ば憤慨しながら即答してきた。ふーん、そんなに要求していると感じているんだ。私自身は伝えたつもりになってはしないか、と内省したつもりだったのだが、そうではないらしい。

 

・トップが社員の言うことを聴いているか

次に話題になったのが再生できる会社とそうではない会社の違いだ。

現在、潰れたり潰れかけたりした企業の再生の案件が増えている。そんな会社に関わってV字回復を果たし3年もしないうちに次のチャレンジブルな成長戦略を描いている社長の共通点は「人の話を聴く」ことだ。

ある会社の再建を託された社長は、社員一人ひとりと全員面談した。また別の再建を託された会社の社長も、休みの日にも現場に出向き現場を観察し現場の社員と対話している。どちらも決して小さな会社ではない。どれだけのエネルギーが必要か。そんな社長は私達の苦言にもオープンマインドで聴いてくれる。そんな社長にはこちらも一肌脱ぎたいと本気になる。

一方で人の話を聴かない社長も少なからずいる。戦略は良くても社員のモチベーションは上がらない。自分の意志が通じないのを社員のせいにしたりする。自分に都合の良い情報には反応するが、都合の悪い情報には真正面から向き合わない。結果的にやらされ感が蔓延し、中にはメンタルを病んでしまう人も出る。

社員は自分の事を聴かれた以上には、社長や上司の話は聴かないという原則があるようだ。自分の本音を言い切らないと、人の話も聴ききれないのだ。

 

大島 岳

自分の観方に自信が無い人の方が向いている

ここのところ、経営にとってもマネジメントにとっても又コミュニケーションを取って行く上でも、自分の観方に自信を持っていて疑わない人に、苦労している人が多い。自信を持った方が良いに決まっている、ということが、普通の常識かも知れない。自信の持っている人の観方がその状況の本質を捉えているときは強い。強烈な説得力を持って相手の心に響く。しかし自分の観方に疑いを持たなくなったときに問題が起る。

状況の本質を自分は捉えていないことを知ることの方がより価値があるのではないかと、思うような体験がここのところ続いている。ある場面で、本当は何が起っていたのか、腑に落ちない事があった。それで終わらしても問題は無かったのだが、、その時その場にいた人に、何人もの人に直接出向いて会い、結果的に何日もかけて会ったときに、自分が見えていなかったことに気付いた。その時に思った。「腑に落ちない」その事を探求し続けて良かったと心から思った。「腑に落ちない」という感触、そしてそれは何かを知りたいという探究心が大事なのでは無いか。

自信の無い人は男らしくない、ウジウジしている。そんな思い込み込みにとらわれていないだろうか。そんな枠組みに支配されている人は、自分の「腑に落ちない」という感覚を何処かで切り捨てる。そしてそれがいつの間にか習慣になって感受性自体が消えていってしまう。

自分の観方に自信があることより、「腑に落ちない」事に対する対するブレない探究心こそ大切なのではないか。ここのところ、そんな事を思っている。

大島 岳

OWNERSHIP

今年も既に4分の1が過ぎようとしている。

この3ヶ月間は改めて濃い3ヶ月間だったと思う。震災以降一般的な研修が一気に少なくなり、クライアントも世界の環境変化に巻き込まれていった。今までは白物家電は日本のお家芸であったが韓国にその地位を奪われ、その流れを一気に受けた会社もある。タイの洪水を受けて厳しい業績になったクライアントもある。一方で競合が洪水の影響でダメージを受け好業績を残した会社もある。しかし洪水は今の世界の変化の中ではまだ小さな変化かも知れない。

2月に久し振りに自分が受講生になる機会があった。ODの科学的基盤となっている行動科学の父が作ったNTL(National Training Laboratory)のPresidentのブレンダ・ジョーンズさんがメインコーディネーターをする南山大学人間関係センター主催の組織開発ラボラトリーに参加してきた。開催場所はTグループの聖地として有名な清里の清泉寮だ。NTLのPresident直々のプログラムを日本で受講できる機会はもうないだろう。

内容としてはごく基本的なODコンサルテーションの流れを追うものであったが、プログラムは開催する人の人格そのものが出る。だから刺激的だった。

学ぶことは沢山あった。しかし敢えて1つだけとするとOWNERSHIPの一言だ。日本語に訳すなら「覚悟・当事者意識」と言った所だろうか。これを無くすと組織も社会も全て健全性をなくしていくと言うことを体験したのは強烈だった。しかも何時自分も無くすかも知れないという可能性を見てしまったことだ。

清里から娑婆に降りてきて、そこに広がっている状況はOWNERSHIPをなくして自滅して言っている組織ばかりだ。戦略が悪いわけでもない。OWNERSHIPをなくしたがためにおかしくなっている。

そのような組織に関わるからこそ、ODコンサルタントは自らのOWNERSHIPはどうなのか自戒しなくてはならない。

 

大島 岳