新型コロナウイルスの影響で、皆さま大変な時期だとお察しいたします。
こういう時こそ、次のステージに向かうべく攻めていただきたい、そんな思いを込めて、今回の対談をお送りいたします。
変化の時代にふさわしい組織開発(OD)とは何か
※1/3より続く
大島:昨年、赤字転落を再建する社長からのご相談がありました。当時は、変化への抵抗感を持った幹部がボロボロ離脱してしまうという状態でした。その中で、とことん主観をぶつけ合う合宿ミーティングを行い、結果的にはその目標観が共有されたとたんに、さまざまな問題が解決され、順調に動き始めました。
やる前は、「話し合っている暇なんかない」という意見もありましたが、改めて、戦略実行のスピードアップをするためには、本音で目標観を一致させるだとか、対立する人の本音を聴くだとか、今ここで起こっていることのテーブルの下のプロセスを考えるとかの、まさにODの一番大事にしていることが、ますます重要になっていると確信しました。
藤田:ゴールや目標観はそろった方がいいだろうと思いながらも、「話し合ったってゴールがそろうのか」という疑念を持っている場面に遭遇します。心理的安全性の場が日常の中で足りていないのでしょう。
単に仲が良いかどうかではなく、切った張ったの世界で本当の話し合いができるかどうか。そこには葛藤も生まれるかもしれないし、何か嫌なことを言われちゃうかもしれないけど、でもこの仲間とだったら話せるという場をいかに作っていくか。外部からサポートする僕らの一つの大きな役割なのだと思っています。
平尾:目標観やゴールの背景の共有がポイントだと見ています。例えば、具体的な目標数値は特に幹部クラスであれば、皆さんそろっているじゃないですか。だけど、その背景となる人間臭い部分が共有できていないことが多いですね。
昨年体験した話し合いで、ある幹部が過去における自分の間違ったマネジメント行動を、本当に素直な表現で詫びたことで、「あ、今回は本気で立て直そうとしているんだ」と全員に伝わった瞬間がありました。
大島:外部環境変化といったインプットはもちろんのこと、「歴史という、今見えていないもの」が今のプロセスに影響を与えている点に光を当てる。これも、私たちの大事な仕事なのではないでしょうか。
今お付き合いしている会社で、戦略的に脚光を浴びているのは新規事業ですが、その企業で創業時からずっと中核だったのは別の既存事業でした。一方で、その会社は、外のステークホルダーからの幹部が3~7年で入れ変わっていくので、過去どんなことが起こっていたのか知らないという状況がありました。
そのため、「今まで支えてきたのはここなんだ」という歴史を理解されないまま、変革を求められる既存事業のメンバーは、ものすごくアンチな動きをしていたわけです。
藤田:そうした不満をサーベイで数値化して、結果だけで判断しようとする。だから組織の中で余計な軋轢が生まれている企業も多いのではないでしょうか。背景をちゃんと押さえることができないと、サーベイ自体も生きません。その結果で何か施策を導入するだけでは、逆効果になります。
平尾:リスクマネジメントの概念もあり、できるだけ仕事を分けて個業化しているために、他部署や他担当の歴史のことは分からない。そこからスタートしていますね。
「ガチ対話」を行うための心理的安全性とは、われわれのミーティングにおけるグランドルール①自分の主観を言い切る②相手の主観を聴き切る③リスクテイクする、という三つに凝縮されるでしょう。
リスクテイクに関しては、例えば、その会社では触れてはいけない意見を、勇気を持って発言するのも重要ですが、実は、それ以上に大切なのが 「今この場に対してのリスクテイク」です。具体的に説明すると、「あなた今、本当に言いたいことを言えてないのではないですか?」とか、「僕はあなたに伝えているのに全然受け取っているように見えない」などの、目の前の人に対して言い切るリスクテイクです。こちらの方が難易度は高いですが、そこまで話さないと、発言の本当の背景だったり歴史観だったりまでは明確にならないと思っています。
大島:「今までの自分たちがとらわれてきた常識」を全部、一から書き直さなければいけない。だから最近、組織開発の中で大きなテーマになってきているのが構成主義です。自分たちが話していることがリアルになっていく。われわれの強みや弱み、外部環境さえももう一度解釈し直さないといけない時代に入っている。われわれが今まで大事にしていた「間主観*1」に時代が追い付いてきたのではないでしょうか。
*1:間主観とは・・・「あっているか間違っているか」ではなく、各人の「主観として見えている事実」を互いにぶつけ合い聴き合い、葛藤を超えて合意に向かっていくことこそが本当の客観性を生み出す、という考え。
⇒3/3に続く
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