• Posted 19.12.20

前回に続いて、広報コンサルタント・石川慶子氏と弊社の平尾貴治とのインタビューの第2弾です。

組織の中のフィードバックシステムの重要性

Q:ところで石川さんは経営者のかたにどういう働きかけをされているんですか。

石川:私はメッセージ内容と共に表現の仕方に注意しています。例えば、失言が多い人たちには、まず失言しているという事実を自覚してもらいます。また、言葉の使い方として、本人はそのつもりがなくても、上から目線のメッセージだったり、あるいは真剣な話をしているのに、苦笑いが癖になっていたりする人もいます。
いくら思いがあっても、どうやって伝えるのか、表情、声のトーン、言葉の選び方までの配慮まではなかなかそう簡単にはできません。そういった一つ一つの表現力が、その組織の文化だと思うんです。言葉や雰囲気には、普段使われている言葉、あるいは立ち振る舞い、関係性がそこに表れます。そしてそれはその組織のトップがつくり出していることも多いのです。
もちろん内容の組み立てなど、スピーチ原稿も見ますが、そもそも、社長になるまでの間で、「大事なことを話すのに笑いながら話してはダメです」という話を周りの誰からもフィードバックはされていない。日本はトレーニングやフィードバックの文化が浅いからではないかとみています。
私は広報の専門家として、お詫びの記者会見の準備なども指導しますが、ネクタイについてさえ、「謝罪場面で赤のネクタイはだめですよ」と社長に言えない。
記者会見で靴下が短くてすね毛が見えてしまっていることさえ言えない。こんな笑い飛ばせることでさえ、生真面目に考える。日本人には「フィードバックは相手を傷つけるもの」という思い込みがあるようです。

平尾:自分がコンサルテーションの中で行っているのは、組織の中でフィードバックを適切にし合うと実はそんなに傷つかないし、決して人格を否定されているようにはならないということを体験してもらっています。

石川:以前体験した平尾さんのグループ討議で、集団のプロセスを観察しフィードバックする演習はとても興味深く感じました。

ISO31000と組織開発

Q:石川さんはISO31000(リスクマネジメントの国際標準規格)に基づいて、組織リスクの話をされますね。ISO31000と組織開発の関係性をどう見ていますか。

石川:リスクマネジメントの国際的ガイドラインだと説明すると皆さん聴く耳を持ちますから、積極的に紹介しています。2009年に発効しましたが、その後2018年のISO31000の改訂において、PDCAの中に「統合」が入りました。ガバナンスや企業の文化的な側面も考慮すべきことが追加されました。そういう意味では、ISO31000は、単に仕組みをつくるだけではなく、企業文化を配慮しなければいけないし、組織開発の考えにつながっていると思います。
ただし、文化は目に見えないものだからみんな気付きにくい。ですから外からの視点を持つことの重要性を感じます。
ISO31000に組織文化の側面が明記されたことで、今後は組織開発に対する関心の持ち方や、企業における取り組み方も変わっていく可能性があると思います。不祥事の背景にはその組織・企業にある意見を言えない空気や文化的な側面がある。そのことが国際的にも共通認識として持たれたから、改訂版に明記されたのだろうと思います。
第三者委員会の報告書でも、最後はその風土の問題などが必ず指摘されます。例えば、内部通報の仕組みがあっても、実際に機能しているかどうかが極めて大事です。活用しにくい雰囲気や、「どうせ言っても潰されるよね」「報復人事があるんじゃないか」という意識があったら、誰も使わないじゃないですか。それはたぶん、企業文化の問題だろうと思いますね。

Q:文化というのは価値観やコミュニケーションの在り方ということですか。

石川:「安心できる」「言ってもいいんだ」という雰囲気や環境がないと、運用できないですよね。

日本型企業の課題

Q:石川さんは日本型企業の課題についてどうお考えですか。また、近年の不祥事で学びがあったことなどあれば、教えてください。

石川:日本は長い間、一律採用と終身雇用であったために、「お上の言うことは絶対だ」「情報は上から下に流れるものだ」という発想があり、上にもの申すというのがタブー視されていましたね。コミュニケーションが必要なかったといえます。

平尾:組織開発も、結局学術的には欧米で完成されることが多い。それは元々彼らの方が、異文化や異宗教の中で、人と人がそうすれば一体感を持てるかなどを本気で学んできたのでしょう。

石川:昔、日本では広報なんか必要なかったですね。あうんの呼吸で…。以心伝心というか。グローバル企業の日産でさえ、報酬を決める委員会がなく、ゴーン氏が全部決めていたことには本当に驚きました。そこはガバナンスの問題だろうと思います。
最近は「コーポレートガバナンス・コード」が重視されてきているので、そこを基準にする株主や記者が出てきています。ダイバーシティの観点から、女性の取締役をなぜ登用しないのかといった質問も増えてきています。女性取締役が増えれば取締役会の雰囲気がガラッと変わっていくのではないでしょうか。

⇒第3回「 トップと現場の乖離」に続く