付加価値の創造

気がつけば今年もあっという間に4分の3が過ぎ、10月です。

この1カ月は厳しい暑さと急激な冷え込みが影響したのか、健康自慢だった私も恥ずかしながら体調を崩してしまいました。

仕事にも支障が出てしまうため、普段はあまりお世話にならない病院に駆け込むこと数回。

その中で、付加価値について考えさせられる体験をしました。

 

病院にいかなくてはまずいな・・・と感じたとき、あいにく休診日だったこともあり、地元の病院と通勤途中にある病院の2か所で診察を受けました。

通勤途中にある病院(A医院)は初診だったので不安もありましたが、診察してくださったお医者様が丁寧に症状を聞いてくれただけでなく、「自分の目で見たほうがわかりやすいでしょう」と、私の患部の映像と健康な人のサンプル映像をモニターに映し出して見せてくれました。

しかし、地元の病院(B医院)では何ともそっけない対応。

こちらから症状を訴えても、「じゃあ、とりあえず薬を出しておきましょう」というだけで、いかにも“流れ作業”で診察しているという雰囲気(少なくとも私にはそう感じました)。

悪印象のとどめを刺したのは、カルテに視線を落としたままでこちらの目を見る事もなく「お大事に」と言われ、診察室を後にしたことです。

次から次へと診察を行い、そこまで意識がいかなかったのかもしれません。

でも、自分が顧客の立場で感じたことは、「B医院には二度と行きたくない。多少遠くても『安心感』という付加価値を与えてくれたA医院のほうが信頼できる。」ということです。

 

優れた技術や使い勝手の良い商品も大切ですが、競争を勝ち抜き「選ばれる存在」になるには、それをどのようなプロセスで提供するか?ということも極めて重要である・・・。
健康の有難さとともに、今年の9月はそんなことを痛感しました。

 

Sotoyama

ロンドンオリンピック~大和撫子の活躍~

今年の夏を熱く盛り上げてくれたロンドンオリンピックも閉幕。
暑さや寝不足と戦いながら、選手たちの頑張りに胸を熱くした方も多かったのではないでしょうか?
かくいう私もその一人。
過去に仕事でスポーツ取材や、チアリーダーチームのコーチ業を経験してきたこともあり、特に選手の育成や大舞台でのメンタルコントロールに注目して観戦していました。

 

日本の金メダル第1号となった柔道の松本選手に始まり、レスリング、サッカー、バレー、卓球、水泳、バドミントン、アーチェリー・・・
連日多くのメディアでも取り上げられていたように、私も今大会は日本女子選手の活躍が大変印象に残りました。

 

大会後も「日本人女性が躍進した裏に何があるのか!?」というテーマで、選手育成やチームマネジメントの方法が取り上げられていますね。
女子サッカー・なでしこジャパンは、選手個々の長所を生かし、自信を持たせる。そして現場に権限移譲し自主的な判断を促すマネジメント。
女子バレー・真鍋ジャパンは、データ分析で自身の強み・弱みを客観的に把握させ、コーチ分業制で細やかな指導を行う。そして選手たちの意見を良く聞く「風通しの良さ」もポイント。。。
確かに一つ一つの方法には意味があり、私自身もコーチ業の中で失敗もしながら学んできたことばかりです。
私自身が感じている躍進の一番のポイントは、「女子選手たちに『期待』を明確に伝え、『自分(たち)で考える』ことを本気で任せているか」。
つまり、一個人・一アスリートとしての存在を承認しているか?これに尽きると思います。

 

日本人女性の持つ特性が、ここ数年で急激に変わったわけではないでしょう。
スポーツ界では、最近でこそ選手の自主性を引き出すコーチングも取り入れられていますが、競技によっては未だ指導者が絶対的権限を持つ世界もあると聞きます。
そんななか、選手たちは「期待されていることへの喜び」や「自分で考え、決断することの重みとやりがい」を感じ、競技へのモチベーションを維持することができた。
そこに、女性ならではの「共感力(自分以外の他者の思いに共感し、それを自分の力に転換していく能力)」が拍車をかけ、逆境をはねのける精神力や強いチームワークで私たちを感動させてくれるプレーが生まれたのではないか?と思うのです。
多くの女子選手たちが競技後のインタビューで、「支えてくれた周囲への感謝の気持ち」「共に戦った仲間との絆の強さ」を口にしていたのは、皆さんも記憶に新しいのではないでしょうか。

 

ビジネスの世界を見ても、日本では一般企業における女性管理職はわずか8.7%(2011年度雇用均等基本調査)。まだまだ男性に比べ、女性が「社会を動かすようなインパクトを世の中に与える」機会や「決断を自分に委ねられる」機会は少ないのが実情です。
逆に言えば、ロンドンオリンピックで輝いた大和撫子たちのように、女性の力を存分に引き出し今まで以上の成果を出せる可能性が、まだ日本企業には秘められているということです。

 

少子高齢化が進み、日本の労働力人口は減少する一方です。
将来を見据え、人的リソースである「女性社員」活用に今から真剣に取り組めるかどうかは、組織が生き残るポイントの一つになるではないか…。
オリンピックでの大和撫子たちの活躍に、私自身が大きな力をもらった夏となりました。

 

Sotoyama

若手社員の力を活かすには

このところ、新入社員や就職を控えた学生との出会いや、同じ組織の中で「育成される側」「する側」両方の方たちとお会いする機会があり、『若手社員が主体性を持って働くにはどうしたらよいか?』を考えさせられます。

言われたことしかやらない・・・など、いわゆる『ゆとり世代』と呼ばれている若者とのコミュニケーションに、上司や先輩の皆さんが頭を悩ませているという話は良く聞きます。

私自身も若い世代と直接コミュニケーションをとっていて、ジェネレーションギャップを感じるのは確かです。

私の学生時代と比べると、皆さんはるかに勉強されているし、真面目な方が多い。

同年代の仲間と共同作業をさせれば、上手にまとめてプレゼンテーションもできる。

「素晴らしいなぁ」と感心する一方で、違和感を感じるのは「失敗を極端に恐れる姿勢」。

 

先日お会いした、若手社員の教育担当者がおっしゃっていた言葉が頭に残っています。

「自分たちが新人の頃は“失敗するのが当たり前”と思っていたが、いまの若手は“最初から失敗してはいけない”と思っている」

なるほど・・・確かに。

失敗しても思い切りやれる環境があったから、チャレンジを繰り返して成長ができる。

思い返せば、私自身の人生も失敗だらけです。

でも思い切りチャレンジすることを周囲の人たち(職場も友人も、もちろん家族も)が見守ってくれたからこそ、貴重な経験を積み重ね、自覚していなかった自分の力に気づき、エネルギーも沸いてきたのだと改めて気づきました。

 

若者が失敗を恐れずチャレンジしていくには、親と子の関わり方や教育の在り方も、考えてなくてはいけない問題だと感じます。

どこから手をつけて良いか気が遠くなるような話ではありますが、それこそ「チャレンジしないと何も始まらない」。

いまの自分ができることは、若手社員の方たちはもちろんですが、人材を育成する側の方たちも“失敗を恐れずチャレンジできる(リスクテイクできる)場”を少しでも作っていくことなのではないか・・・。

そんな事を考える今日この頃です。

 

Sotoyama

エグゼクティブ

ここのところ、現場で働く社員一人ひとりに「主体性」や「当事者意識」を持って行動していただくためのコンサルテーションが続いています。
その中で、「組織で働く誰もが『エグゼクティブ』になり得る」ということを痛感させられました。

 

『エグゼクティブ』と聞くと、幹部・役員・管理職を連想する方も多いでしょう。
しかし、ドラッカーは「経営者の条件」の中でエグゼクティブについて、「組織の能力に実質的な影響を及ぼすために、意志決定をする」「自らの貢献について責任を負う」人であると記述しています。
つまり、経営管理者だけでなく、専門家として組織に独自の貢献をする人であれば、エグゼクティブになり得るということを言っているのです。

 

この数週間は、経営管理者以外の方にお会いする機会が多くありました。
例えば、もの作りの生産現場で汗を流す職人さんや、社員の生活をサポートする専門家、まだ経験は浅いけれど高い問題意識を持っている若手社員など。
そういった方々が、プログラムを通して開花され、『この方はエグゼクティブだな』と感じる瞬間が何度もありました。
プログラムに関わる私にとっても、大変嬉しい瞬間です。

 

改めて、管理職が何人いるか…ではなく、組織が成長していくには『エグゼクティブ』と呼べる人が何人いるかが大切なのではないか、そのために我々ODコンサルタントの出来ることはまだまだあるはずだ、と感じています。

 

Sotoyama

アージリスからの学び(2) 「心理的エネルギー」

OD(組織開発)の歴史を紐解いていく、という目的のもと、『組織政策論 アージリス研究』(大友 立也 著)を読むことにした。
まだ読み始めたばかりだが、組織について過去にどのような研究や実践がなされてきたかを知るのは、自分の知的好奇心を満たしてくれるだけでなく、いまの自分が立っている『世の中』を理解し、未来を作っていくうえでも大切なことなのだと感じている。

第一章で私の胸に突き刺さったのは、「アージリスが、基本的にもつ思想は、心理的エネルギーが最大量に注ぎ込める組織である。」という一節であった。
この思想がどれだけ実現しているか、それを測る規準として、アージリスは「混合(ミックス)モデル」なるものを創設したというのだ。
心理的エネルギーが最大量に注ぎ込める、というのは簡単だが、ふと現実の世界に目を向けると、組織…それも「会社」でそれを実現するのはなかなか難しい。
そんな空気を肌で感じているのか、この春に出会った大学生や新社会人からは、会社で働くということに対しての希望より、不安や諦めの声を聴くことが多かった。

人間のエネルギーを次元に、経営や組織の効率をみようとしたアージリス。
右肩上がりの時代を知らず、物心ついた頃から社会に混沌とした空気が流れていた若い世代にも、イキイキと働いてもらいたい!と思っている私にとって、「心理的エネルギー」を軸にしたアージリスの研究は非常に興味深い。
やることの多さに追われる毎日だが、この先を読み進めることには「心理的エネルギー」を投入してみたいと思っている。

 
Sotoyama

薄れていく記憶

先週、高知でソメイヨシノの開花宣言が出され、いよいよ本格的な春の足音が聞こえてきました。
この季節は、卒業・入学・就職など、人生の様々な節目の季節でもありますね。

 

私事ですが少し前に引っ越しをしました。
荷物の整理をしていたら、押入れの奥にしまいこんでいた昔の日記を発見・・・!
そこには、大学を卒業して最初に入った会社での悪戦苦闘の日々が綴られていました。
「これを読み始めてしまったら、荷造り作業が進まないぞ」とわかってはいるものの、半分怖いものみたさで読み進めると、悩み・葛藤しながら過ごしていた自分の会社員生活が鮮明に蘇ってきました。

 

希望を持って入社したものの、バブル崩壊の影響で度重なる人員削減や組織変更、自身に課せられる期待と業務量のボリュームに押しつぶされていた毎日。

会社の向かう方向がなかなか見えず、自分の将来を悶々と考えていたことを思い出しました。
その中でも救いだったのは、仲間や尊敬出来る先輩・お客様との出会い。人間関係に支えられ、ギリギリの精神状態でも何とか仕事が出来ていたのだと思います。

 

現在、組織開発をサポートする側になり、企業の中で起きている様々な問題や現場の方の声と向き合わなければなりません。
その一つひとつの向こうに誰かの“人生”がある。

「自分の力ではどうにも出来ない」という“組織の中に漂う諦め”をほんの少しでも減らすことが出来たら、自分が組織開発に関わる意味があるのだろうと感じました。

 

桜の季節、コンサルテーションや研修で様々な方とお会いできる予定です。
「薄れていく記憶」を呼び起こし、組織の中で感じるクライアント様の“葛藤”と丁寧に向き合っていきたいと思います。

 

Sotoyama