支配からの脱却
2013.02.08ブログ
最近、ニュースで学校やスポーツ界での体罰や高圧的な指導が問題になっています。
私はこの話題が出るたびに、どこか違和感を感じておりました。なんとなく正論で「体罰はよくないのでやめるべきだ!」とか、「いや、弱い気持ちを鍛えるには厳しさが必要だ!」とか「べき論」だけで語られているような気がするからです。
コンサルテーションの現場でも、管理職の皆さんから「上司の強いマネジメントによって、部下の思考がストップしてしまう」「逆に部下のメンタルやパワハラの訴えを気にして厳しく叱れない」という相談を受けることが多くあります。
私は、教育においても企業においても、「強いマネジメント」の問題について、組織論の見地から見るといくつかの共通する本質があるように感じました。
一つは「個人の本質」、もうひとつは「組織の本質」です。
まず、個人については「人間は、自分の判断を“客観的に考えて正しいことをしている”と思い込んでしまう」という本質があります。
プロセス指向心理学、プロセスワークの主な創始者の一人であるアーノルド・ミンデル(Arnold Mindell、1940年 – )は、「犯罪だろうが差別だろうが、どんな行動であれ、その行動をとる瞬間は、その人間は最善と考えて行動している」と述べています。
逆に言えば、どんな「正義」であろうと、全てその人の思い込みであり、主観なのです。
もちろんだからといって、「企業のランクの高い人や学校の指導者などが、自分の正義感を捨てねばならない」ということではありません。大切なのは「どのような“正義”であろうと、全ては自分の思い込み(主観)にすぎない」という自覚ではないでしょうか?
次に組織の本質です。
組織風土とは「規範」「価値観」「暗黙の評価基準」「暗黙の相互援助システム」の四要素から構成されており、組織の中の様々なシステムが、組織風土の影響下で機能している、という本質です。
つまり、強いマネジメントが常態化するということは、それを支える四要素があるということです。そこを切り込まずして「パワハラをした人間が悪い」「受け手が精神的に弱い」などと、個人の問題に矮小化したり、いたずらにルールを作っても意味がありません。
特に、いわゆる日本型社会は、「強い結びつき」を求めるがためにより風土は硬直化しやすいように見えます。今回の全日本柔道の一件でも、柔道界や警視庁のOB・現役の集まりの中で、ある特殊な風土が純度を増してきたように見えます。
最後になりますが、ほとんどの企業が、成熟した業界で新たな事業価値を生み出すことを表明されています。そのためには、社員一人一人が、過去の慣習にとらわれることなく、新しい価値を生み出す行動をすることが大事だと考えます。
日本の社会全体が、正に「支配からの脱却」を目指す時代なのではないでしょうか。
平尾貴治
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