新人を育成することで感じていること

弊社にも新人が入ってきました。
これをお読みになっている皆様の会社でもそうでしょうが、日々の業務にプラスして新人育成は簡単なことではありません。

 

一方で、「人に教えることが、自分が学ぶ最高の手段」という言い古された言葉を改めて痛感できています。
弊社の理念・ビジネスモデル・お客様との関係性・日常業務まで、多くのことを教える中で、自分自身の頭が整理されていきますし、何より新しい世界に飛び込んできた彼らと話すことで、「自分自身はなぜこの道を選んだのか、その時の夢は達成できているのか」などと、哲学的な問いまでが、自分に突きつけられている毎日です。

 

実は最近、あるクライアント様に対して、評価制度構築と部下育成スキル向上プログラムを実施させていただいているのですが、本来の目標観以上に、評価者(上司)自身の会社と仕事に対する姿勢が変化成長していくのを目のあたりにしております。

 

「うちはリーダークラスが育たなくって。」とお悩みの経営者や幹部の方によくお会いいたします。
場合によっては、思い切って彼らに育成責任と権限を与えてみてはいかがでしょうか?

 

平尾貴治

人生の三通りの選択

昔、登山家の小西浩文さんとお話した際に、

「人間の生き方は三通りしかない。最後の時に、満足して死ぬか、折り合いをつけて死ぬか、後悔して死ぬか、その三つだ」という言葉をいただきました。

 
個人的な話ですが、最近になって古い友人からの誘いが急に増えています。
大学、高校、果ては40年ぶりの小学校の同期会など、イベントが目白押しです。
50歳過ぎ、という私の年齢がちょうどそういうタイミングなのかもしれません。
古い友達と会うたびに、自分の人生が、前述の三通りのうちのどこに向かっているのかを、つい考えてしまいます。
クライアントのご担当者からは、「ある年齢を超えたら、もう性格は変わらないですよね。」と質問を受けることが度々あります。しかし、つい先日お手伝いした企業では、幹部の皆さんが今まで避けてきたリスクを受け入れ、それによって見事に組織を変えました。正に、年齢を重ねても性格(=行動パターン)は変えることはできる、という実証例であり、いくつになっても三通りの終わり方を選びなおすことはできるということだと思います。

 

 

そんなことを考えつつ改めて自分自身を省みております。まだまだ老け込む歳ではありませんが、かといって無限に時間が残っているわけではありません。
改めて自分のスタンスを確認し、人生の三通りの選択うちのベストを選びたいと思います。

 

平尾貴治

タイ視察旅行で感じたこと

「ほとんどのクライアントが海外にも拠点を持つ以上、そこの“生”の状況を見ない限りは本当の意味でのコンサルテーションはできないよね。」
そもそも、そんな仲間の一言から、タイにおける日系企業を見に行ったのですが、日本に帰ってきてから数日たっても結構なインパクトが残っております。

 
何よりもタイ人労働者のレベルの高さに驚きました。
恥ずかしい話ですが、現場を生で見るまでは、タイに生産拠点を置くということは単にコストパフォーマンスのためだろうという認識でした。
確かにその部分はあり、人によっては1万パーツ(約3万円)の月収で、高い向上心をもって作業のルールをまじめに守りながら技術を真剣に磨いていました。
しかし、そればかりでないのです。
ある工場の通路にはタイ人チームで作成したQC活動の成果が張ってあり、日本人の力を借りずに作り上げた納期管理ソフトが秒単位で、工程の進捗状況を伝えていました。
日系企業で働くための学校では、プライバシーもない大部屋で寮生活を送りながら、日本語や溶接の技術とともに5Sや効率化を学んでいました。
そこの学校で一番驚いたのは、我々とすれ違うときに、その場で一瞬とまり満面の笑顔で「こんにちは!」と大きな声で挨拶して通り過ぎる、という多くの日本人ができなくなっている正しい挨拶の姿でした。
つまり、彼らは作業技術も高く、マネジメントやカイゼン運動も自ら行い、さらに礼儀作法まで身につけつつ、日本人より遥かに安い賃金で頑張っているのです!

 

 

では、我々日本人は何を持って彼らに負けないことができるのでしょうか?
ひとつのヒントになったのは、タイ人労働者の多くの方は、隣に少しでも賃金の高かったり、残業が多かったりする工場があれば、合理的に判断し、会社を変えるということです。
そこには、日本人のように「今自分が抜けたら仲間に迷惑をかける」とか「自分の製品で喜ぶお客様がいるのだから」という感覚は少なくみえる、と伺いました(もちろん例外はあるでしょう)。
ベタな言い方ですが、「顧客や仲間を思ってひとつの仕事を全うする心」はまだまだ日本人の強みとして考えてよいのではないかと思います。

※言うまでも無いことですが、どちらが良い悪いではなく、「国民性の違い」という意味で申し上げております。

 

 

もうひとつ、新たな希望として見えたのは、日本の20−30代の若いビジネスマンが、タイの地で奮闘努力する姿でした。
彼らは日本の学校を卒業した後、国内で就職せずにそのままタイにある日系企業で働いていました。日本でサラリーマンをやっていたら、係長にもならないような年齢で、クライアントの大企業担当者と渡り合いながら、言葉の違う部下へのマネジメントを必死で行っていました。
そこには、かつての日本人の持っていた「寄らば大樹の陰」的な安定志向とは真反対のリスクテイクを感じました。

 

 
さあ、多くの新入社員が社会に飛び出す季節です。

改めて、「グローバルの中でのこれからの日本人の働き方」という意味を私も考えたいと思います。
タイ人の若者やタイで働く日本人の若者の目の輝きが、今も強烈に記憶に残っています。

 

 

平尾貴治

「手段の目的化」の力

以前、あるトップアスリートだった方から、大変に興味深い話を聴きました。

彼は、何度も優勝にチャレンジしてはギリギリで手が届かず、最後の最後にようやく栄冠を手にした方でした。優勝の時には、当時の現役選手の中では最年長に近かったと思います。

 

その方に「現役時代、何を目的やモチベーションにして、あんなにハードなトレーニングをしてたのですか?」と質問したときに、「”トレーニングメニューをこなすこと”を目的とモチベーションにしてました」と答えられたのです。

「え?優勝することを目的にしてたんじゃないですか?」と伺うと、「もちろん優勝はしたかったけど、結果を目的にすると不安になるし、駄目だったら、その度に落ち込むじゃないですか?自分で決めた毎日のトレーニングは、自分がやるかやらないかだけだから、最高の目的になるんですよ。」というお話しでした。

それを伺って、彼がなんであんなにチャレンジを続けられたのかが理解できました。優勝が目的だったら、もしかしたら諦めていたのかもしれません。現役時代の彼は、トレーニングを目的にトレーニングを行い、その結果として、優勝がついてきたのです。

 

よく我々はコンサルテーションの現場で「手段と目的を逆転させないでください」とお話しします。「絶えず何のために今があるのかを考えましょう」とも投げかけます。

しかし、多くの個人や組織が、その手段を持続できないことで悩んでもいます。

アスリートのお話を伺って、もしかしたら「成果を目的」として、「手段は一段低いもの」と置くことが、持続性を失わせる原因になることもあるのかもしれないと感じました。

 

もちろん、手段を目的にするとどうしても視野が短期的になったり、環境の変化に対応できないという危険性はあります。だからこそ、手段はいつもブラッシュアップをしなければいけませんし、そのために成果との紐付けは必要でしょう。そこは意識しつつも、時には、「この手段をこなすことが自分の目的」と強く思い込み、実行し続ける単純さも必要かもしれません。

 

平尾貴治

 

 

支配からの脱却

最近、ニュースで学校やスポーツ界での体罰や高圧的な指導が問題になっています。

私はこの話題が出るたびに、どこか違和感を感じておりました。なんとなく正論で「体罰はよくないのでやめるべきだ!」とか、「いや、弱い気持ちを鍛えるには厳しさが必要だ!」とか「べき論」だけで語られているような気がするからです。

コンサルテーションの現場でも、管理職の皆さんから「上司の強いマネジメントによって、部下の思考がストップしてしまう」「逆に部下のメンタルやパワハラの訴えを気にして厳しく叱れない」という相談を受けることが多くあります。

私は、教育においても企業においても、「強いマネジメント」の問題について、組織論の見地から見るといくつかの共通する本質があるように感じました。

一つは「個人の本質」、もうひとつは「組織の本質」です。

 

まず、個人については「人間は、自分の判断を“客観的に考えて正しいことをしている”と思い込んでしまう」という本質があります。

プロセス指向心理学、プロセスワークの主な創始者の一人であるアーノルド・ミンデル(Arnold Mindell、1940年 – )は、「犯罪だろうが差別だろうが、どんな行動であれ、その行動をとる瞬間は、その人間は最善と考えて行動している」と述べています。

逆に言えば、どんな「正義」であろうと、全てその人の思い込みであり、主観なのです。

もちろんだからといって、「企業のランクの高い人や学校の指導者などが、自分の正義感を捨てねばならない」ということではありません。大切なのは「どのような“正義”であろうと、全ては自分の思い込み(主観)にすぎない」という自覚ではないでしょうか?

 

次に組織の本質です。

組織風土とは「規範」「価値観」「暗黙の評価基準」「暗黙の相互援助システム」の四要素から構成されており、組織の中の様々なシステムが、組織風土の影響下で機能している、という本質です。

つまり、強いマネジメントが常態化するということは、それを支える四要素があるということです。そこを切り込まずして「パワハラをした人間が悪い」「受け手が精神的に弱い」などと、個人の問題に矮小化したり、いたずらにルールを作っても意味がありません。

特に、いわゆる日本型社会は、「強い結びつき」を求めるがためにより風土は硬直化しやすいように見えます。今回の全日本柔道の一件でも、柔道界や警視庁のOB・現役の集まりの中で、ある特殊な風土が純度を増してきたように見えます。
最後になりますが、ほとんどの企業が、成熟した業界で新たな事業価値を生み出すことを表明されています。そのためには、社員一人一人が、過去の慣習にとらわれることなく、新しい価値を生み出す行動をすることが大事だと考えます。

日本の社会全体が、正に「支配からの脱却」を目指す時代なのではないでしょうか。

 

平尾貴治

公開セミナーのお知らせ「地震シミュレーションワークから学ぶ緊急時と平常時の組織経営の考え方」

本当に組織の存続を考えるのであれば、対処法的な危機管理ではなく、BCM(事業継続マネジメント)もOD(組織開発)も、関連する経営マターとして包括的に取り組むことが求められています。そこで、地震発生後数時間を会社幹部として疑似体験していただ く図上演習を基に、「緊急時に機能する組織行動とは何か」「平常時より考えるべき組織風土とは何か」を実践的に学ぶ場として、日本リスクマネジャー&コンサルタント協会様・富士火災海上保険様との共同セミナーを開催いたします。

本セミナーは、昨年11月に初めて開催をしたのですが、大変ご好評をいただきましたので、今回は時間を30分延長して開催いたします。また、受講後、御希望者には個別企業毎に特化したフォローアッププログラム(無料)も御用意いたしました。

「組織を 根っこから良くしていきたい」と真摯に望む経営リーダーの積極的な参加をお待ちしております。

 

  • 2013年2月8日(金)  18:30~21:00 (18:00開場) 
  • 会場:ちよだプラットフォームスクウェア 401号会議室
    東京都千代田区神田錦町3‐21 ちよだプラットフォームスクウェア4F
    (東京メトロ 竹橋駅 徒歩2分/小川町駅 徒歩7分/神保町駅 徒歩7分/大手町駅 徒歩8分 他)
  • 参加料金:3,000円
  • 共 催 :内閣府認証 特定非営利活動法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会/富士火災海上保険㈱/(㈱シー・シー・アイ
  • 講師:
    平尾貴治
    ・・・株式会社シー・シー・アイ/ドラッカー学会会員/社会保険労務士/ODネットワークジャパン設立発起人
    大村健二
    ・・・富士火災海上保険株式会社マーケティング部シニアリスクアナリスト

 

<当日プログラム概要(予定)>

  • オリエンテーション・・・・組織とは何か/BCMとODの関係性 ・ 図上演習(地震シミュレーション)・・・地震直後に発生する様々な課題について経営幹部として事業継続意思決定を行う
  • 演習フィードバックと情報提供①・・・危機管理専門家の立場から、緊急時における意思決定や想定される問題について
  • 演習フィードバックと情報提供②・・・組織開発専門家の立場から、平常時における組織文化のあり方や課題について

 

<お申込み>

日本リスクマネジャー&コンサルタント協会のページよりお申し込みください。

本当に実効性のある事業継続マネジメント

去る11月29日、日本リスクマネジャー&コンサルタント協会との共同セミナーを開催いたしました。
今回は初めての試みとして、富士火災海上保険株式会社シニアリスクアナリストの大村氏と私(平尾)での二人三脚でファシリテートいたしました。

このセミナーの狙いを一言で言うと、「本当に実効性のある事業継続マネジメント」。

このテーマは、多くの企業がリスクマネジメント計画や事業継続プラン(BCP)を策定しながらも、2011年3月11日の直後にその計画が機能した組織と機能しなかった組織の違いをリサーチしていく過程で浮かび上がってきました。

つまり、緊急時にきちんと計画を機能させるために大切なのは、第一に何が起きるかの想定の幅をできる限り広げ準備しておくこと、また、いざという時に計画がきちんと運用されるには、常日頃、平常時の組織の中の関係性や規範を認識しておくことです。
この大切な事を皆さんに体験的に考えていただこうと、本セミナーを企画いたしました。

 

 

具体的な進行は以下の通りです。

まず最初に緊急時の対応をシミュレーションで体験して頂きます。
「経営会議の最中に大地震が起きる」という場面設定です。
参加者のみなさんには架空の会社の経営幹部として、グループの中で、社長、専務、常務、製造部長という役割を演じて頂きました。

災 害が起こった瞬間、現実と同じように突然の轟音と女性アナウンサーの緊急地震情報が流れます。当然ですが、まずはなすすべもなく、全員が机の下にもぐりこ みます。その光景を見て、私自身も一気に2011年3月11日に引き戻された気がしました(当日のその瞬間も私はセミナーの真っ最中でした)。

轟 音が収まった後は、次から次に、経営陣としての決断・行動を迫られる情報が音声とメモで入ってきます。従業員の安否・建物の被害・近隣住民や取引先との 関係・インフラの停止・度々起こる余震などです。メンバーの方は、話合い、悩みながら、限られた時間で意思決定していきます。そこではリアルな会議と同じ ように、統制を働かせて動くチーム、役割よりも緊急性を重んじるチーム、役割に沿って慎重に動くチーム、など様々な「チームの形」が現れます。

 

実習を終えた後に、まず大村氏が危機管理専門家として、振返りをいたしました。
「どういう判断が正しいか誤りか」ではなく、どのような優先順位だったのか?どこまで多面的に考えての判断だったのか?この非常時が過ぎた後に評価される決定なのか、など鋭い視点での投げかけがあり、深い内省と納得感がありました。
次 に、私から実習で見えた黙示的規範や、組織としてそこにどのような危機が見えるのかについて、プロセスから振返りを行い、更に、組織開発の見地から、緊急 時を乗り切るための平常時における組織文化についての講義をいたしました。たまたま集まったグループにも関わらず、それぞれに、全く違う規範が誕生してい たこと、またその規範に従って自分達が動いていたことに気付き、みなさん驚いていらっしゃいました。

 

終了後には「シミュレーション後に、危機管理と組織の両面から考えさせられたことにより、非常に深い学びを持てた。」「もっとロングバージョンを体験したい。」といったご評価をいただきました。

私自身も、あらためて本セミナーをやってみて、仮説が確信に変わりました。
今後も、ブラッシュアップしながら続けたいと思っております。ご興味のある方はご連絡をいただければ幸いです。

 

平尾貴治

予定調和からの脱却~インプロワークショップを体験して~

ODネットワークジャパンの10月度研究会でインプロのセミナーを受けました。
「インプロ」とは、インプロビゼーション (improvisation)のことで、直訳すれば「先を見る(読む)ことをしない」、つまり即興劇や即興音楽のことを言います。
今回講師になってくれたのは、インプロの第一人者である学芸大学の演劇分野準教授の高尾隆さんです。
当日は、脚本のない短い即興劇を参加者全員でいくつか実践し、それを振返るという実習をいくつか行いました。
一見遊びのようですが(実際に楽しいのですが)、体験後にワークを振返ると、怖いほど普段の自分の仕事の進め方や、人との接し方が見えてしまいます。

 

このインプロに対して、企業・自治体・教育現場など様々な組織からの要請が、急増しているそうです。
社会環境の変化が激しくなる中、ビジネスモデルもマネジメントスタイルも、既存のやり方を続けていては対応できなくなっているのは、「頭」では、わかっています。しかし、同時に人間というのは変化を極端に嫌う生き物でもあります。
だからこそ、あらゆる組織に「変化を楽しめる文化創り」は必要になっているのかもしれません。
先日もコンサルテーションの中でこんな相談を受けました。
若手も含めた社員全員が、現在の仕事の多くについて「今のままではいけない。変えたい」と訴えたそうです。
その声を背に受けて、社長は、プロジェクトチームを社員自身に立ち上げさせ、運営させました。
ところが、プロジェクトチームの活動が進み、いざ自分の仕事に変化が及び出すと、多くの社員が、今度は変革に対する抵抗勢力となり始めてしまったということなのです。

「頭」は変革が必要としながらも、「心」「体」は拒否しています。
高尾さんと中原淳東大准教授との共著「インプロする組織」には、我々は子供の時から「学習」ではなく「教育」ばかりを体験してきたのではないか?という問題提議がありました。
「教育」と「学習」は違います。
教育とは、答えのある正しいものを、権威のある人から教えてもらうことであり、学習とは、答えがなく違和感さえあるもの自分で受け入れ、成長していくことです。
確かに我々のコンサルテーションにおいても、戦略やマネジメントという正解の無いものを実践していただくために、座学でなく、まず本人に徹底的に考えていただく姿勢でいるのですが、最近はメンバーから「先生、まず答え(やり方)を教えてください。僕ら一所懸命覚えますから」と言われることが多い気がします。
こうした変化に対してのジレンマを乗り越えるためには、前述したように、組織に「答えの無いものや変化を楽しめる文化」を定着させることが必要であり、そこを結び付けるカギがインプロにあるのかもしれません。
変化を楽しむためには、評価を手放し、将来に執着せずに、今に集中することです。
先程の本の中では、哲学者の中村雄二郎氏が、「『科学の知』が行き詰まりを見せていて、それを補完するものが『臨床の知』である」という言葉が載っていました。
いかに予定調和の安定感を脱することができるか、それが変化の時代に生きる我々のポイントなのでしょう。

 

平尾貴治

地震シミュレーションワークから学ぶ、緊急時と平常時の組織経営の考え方

南海トラフの衝撃的な被害予想が出ましたが、各企業におかれましては、対処法的な危機管理ではなく、BCM(事業継続マネジメント)もOD(組織開 発)も、より実効性のある経営マターとして包括的に取り組むことが求められています。

 

そこで、地震発生後数時間を会社幹部として疑似体験していただ く図上演習を基に、「緊急時に機能する組織行動とは何か」「平常時より考えるべき組織風土とは何か」を実践的に学ぶ場として、日本リスクマネジャー&コンサルタント協会様との共同セミナーを下記の通り企画いたしました。

 

「組織を 根っこから良くしていきたい」と真摯に望む経営リーダーの積極的な参加をお待ちしております。

 

  • 日 時 :平成24年11月29日(木)  19:00~21:00(18:30 開場)
  • 会 場 :ちよだプラットフォームスクウェア 402号会議室
    東京都千代田区神田錦町3‐21 ちよだプラットフォームスクウェア4F
    (東京メトロ 竹橋駅 徒歩2分/小川町駅 徒歩7分/神保町駅 徒歩7分/大手町駅 徒歩8分 他)
  • 共 催 :内閣府認証 特定非営利活動法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協/(㈱シー・シー・アイ
  • 講師:
    平尾貴治
    ・・・株式会社シー・シー・アイ/ドラッカー学会会員/社会保険労務士/ODネットワークジャパン設立発起人
    大村健二
    ・・・富士火災海上保険株式会社マーケティング部シニアリスクアナリスト

 

<当日プログラム概要(予定)>

  • オリエンテーション・・・・組織とは何か/BCMとODの関係性 ・ 図上演習(地震シミュレーション)・・・地震直後に発生する様々な課題について経営幹部として事業継続意思決定を行う
  • 演習フィードバックと情報提供①・・・危機管理専門家の立場から、緊急時における意思決定や想定される問題について
  • 演習フィードバックと情報提供②・・・組織開発専門家の立場から、平常時における組織文化のあり方や課題について

 

<お申込み>

日本リスクマネジャー&コンサルタント協会のページよりお申し込みください。

 

吉田茂のドラマから

吉田茂をモデルとしたNHKドラマ「負けて勝つ」の最終回を見た。
NHKは時々「ハゲタカ」のように神がかり的にストライクゾーンのドラマを作ってくれるが、今回も本当に胸に響く重厚な作品だった。

 
吉田茂は、「アメリカに飼われた犬」として風刺漫画に描かれたように今だに賛否両論の絶えない政治家である。確かに米軍基地・自衛隊・日本国憲法など今に続く重大問題の根っこに大きく関わる人物であろう。

しかし、彼もその側近の白州次郎も、絶対譲れないもの、つまり「日本の独立」をひとつだけ押し通すために、複雑な外交の潮流を見ながら、「個人の正義」は降ろし、譲るべきを譲ってきたのではないか、というのがこのドラマの訴えたいことだったように思える。その動きは後世の人間からみれば、非常に政治的であり、自分のポリシーが無いように見えるかもしれない。
しかし、第二次大戦の敗戦国が独立することがどれほど困難だったかは、東西に分断されたドイツや多額の賠償金を払ったイタリアを見れば明確であり、吉田茂はそのために「プライド」も「正義」も、時に「論理的合理性」すらも捨ててきたのではないか。
私自身は、もともと好きな歴史的人物は新撰組の土方歳三だった。彼は単純さこそを愛し、時代がどうあれ「自分の信じる正義」のみに生きて死んだ。もし同時代であれば吉田茂など真っ先に叩き切る相手だったろう。
学生やサラリーマン時代の私もまた土方のようにひたすらに単純に生きたかった。

 

ただ、コンサルタントとして仕事をさせていただくなかで、組織においては「絶対に譲れないもののために、プライドや正義を捨て、時に政治的戦略的に動くしたたかさ」がいかに大切かということを現実の場で学んできた。特に中間層のリーダーをお手伝いすると、外部においては貪欲で我儘なマーケット、内部においては強烈な統制をかけてくるトップなどと対峙しながら、それでも各々の譲れないものを通していかねばならない。例えて言えば、山の頂上を目的とするのであれば、天候によって登山ルートは変更し、チームメンバーも変えてでも目指していくのだ。

そうした行動は場合によっては「卑怯」と言われることもあるかもしれない。しかし、それを恐れていては頂上には辿り着かないのだろう。

 
自分の「絶対譲れないもの」とは何だろうか?そして譲れないものを通すために捨てるべき正義やプライドとは何だろう。
そんなことを考えさせてくれるドラマだった。

 
平尾貴治